小説

『マッチ売りの少女とぼく』霜月りつ(『マッチ売りの少女』)

 マコトは起き上がってそっと子供部屋のドアを開けた。
 子供部屋の廊下はそのままテレビのある部屋に続いているはずだったのに、そこにあるのは外のような石の道だった。
 そして上には天井があるはずなのに星が瞬いている。

 いったいいつのまに家から天井や廊下が消えたのだろう?

 マコトはおそるおそる石の道に足を出してみた。

 石の道は白く光っていて遠くまで続いている。
 マコトがその道に両足をそろえて降りたとき、今でてきたドアもなくなっていた。
 マコトは怖かったけれど、仕方なくその道を歩き出した。

 少し歩くと前の方が明るくなった。小さな火が灯っているようだった。そしてソレを点しているのは女の子だった。
 白いブラウスと赤いスカート。手にはかごを。

「マッチ売りの少女」だ!

 マコトは走り出した。

 だめだだめだ、火をつけちやいけないんだ!
 「少女」の手元で火が消えた。次のマッチをつけようとしている。

「だめー!」

 マコトは「少女」の前に滑り込んだ。
「それつけちゃだめ! 死んじゃうよ! おばあさんは助けてくれないんだ!」
「でもわたしはおばあさんに会いたいの」
「だめだよ! 死んじゃうよ、死んじゃダメなのに」

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