小説

『マッチ売りの少女とぼく』霜月りつ(『マッチ売りの少女』)

 マコトは足を踏みならした。
「どうしてマッチの火の中におばあさんがでてきたのに肋けてくれないの?」
 先生は困った顔をして、
「これはそういうお話なの」と言うだけだった。

 どうすればあの子を肋けられるのかな。

 マコトはお遊戯のときも、お昼ごはんのときもそのことを考えた。

 マッチを三つつけたらアウトなのか。だったら三つ目のマッチをつけないようにすればいいんだ。
 でもどうやってマッチをつけないようにしようか。

 お昼寝のときも考えていた。だから夢の中で「マッチ売りの少女」の夢を見た。

 
 暗い暗い中にその子はしやがみこんでいた。そしてマッチをつけようとしている。
「だめ!」
 マコトは叫んで駆け寄ろうとした。でも足がまるでプールの水の中にいるみたいにゆっくりとしか動かない。
「それつけちゃだめ!」
 でも「マッチ売りの少女」はそのマッチをつけるのだ。
そうすると、火がたちまち少女に燃え移って、少女はまるで夏の花火みたいにパチパチ光りながら消えてしまったのだ。

 
 マコトはびっくりして起き上がった。
心臓がドキドキしている。
 こんなことってない。なんてひどいお話なんだろう!
 

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