小説

『Dカンパニー』サクラギコウ(太宰治『グッド・バイ』)

 カブラギに相談すると関単に答えが返って来た。
「分かりました。会わせましょう」
 結城は慌てた。それは困るのだ。美玖はカンが良く、友人だと紹介してもきっと信じない。サトミだって何を言うか分からないのだ。
「なんの為にオタクと契約したと思ってるんですか!?」
 抗議する結城に、カブラギが落ち着き払った様子で「ご心配なく」と言い
「本物と会わせるわけではありません」と答えた。
「え、まさか!」と結城は答えた。だがアヤならできるかもしれないとも思った。
 アヤと行動を共にする前なら、カブラギの言葉も信用しなかった。だが今は違う。アヤならできるかもしれないと思ったのだ。
 美玖の化粧はいつも濃かった。それは結城の不満でもあったのだが、今はそのことに感謝したいくらいだった。美玖に変身したアヤの化粧は、結城でも見違うほどだった。服も美玖が良く着ているブランドの物だ。しかも話し方まで美玖そのものだった。
 美玖に化けたアヤとサトミを会わせると、心配した通りサトミは今までの結城との関係を暴露し始めた。ホテルの名前や部屋番号までもだ。会った日は手帳に付けていたらしく、その手帳まで見せた。そしてベットでの結城の癖や態度まで言い出したときはさすがに結城は怒りを覚えたが、カブラギの言葉を思い出し黙っていた。
徐々に興奮してきたサトミは、捨て台詞のように言った。
「あなたも可哀そぅ。こんな最低の男と結婚するなんて!」
 そこでも結城は言葉を挟まなかった。するとアヤがサトミにこう答えたのだ。
「ありがとうございます、心配していただきまして。でも幸せになります私たち」
 サトミは敗北感を顔いっぱいに浮かべて帰っていった。

 この日も、四人目の人妻レイカとも会うことになっていた。アヤが美玖に変身していたため、同じ日に会った方が都合が良いというのだ。
 レイカは結城より10才上だった。結婚し小学生の娘がいた。結城がもっとも関単に別れられると考えている相手だ。「家庭を壊すつもりはない。上手くやりましょ」というのがレイカの口癖だった。だからDカンパニーともCプランの契約だ。80%の成功で良かった。レイカも騒ぎを起こしたり、夫に知られることだけは避けたいと考えてるはずだ。

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