小説

『Dカンパニー』サクラギコウ(太宰治『グッド・バイ』)

「これでは、どこに何があるか分からないだろう?」皮肉を込めて結城が言った。
「全部把握している」とアヤは即答し
「午前中、サクラさんに会いに行った服は、あなたの右斜め後ろのグリーンの服の下にある」
 結城が後ろのグリーンの服をどかした。するとあのミニのワンピースがでてきた。ブランドの服が台無しだ。
「ね、結構合理的」
 アヤはまったく悪びれる様子はない。結城は急にアヤへの関心をしぼませていった。

 三人目の女サトミは、いちばん厄介な相手だった。結城が美玖と付き合っていることを知っているからだ。美玖の写メも手に入れていた。だからサクラとマユミのようにアヤが美玖のフリをして会うことは出来なかった。
そのためDカンパニーが考えた別れのプランはこうだった。結城が素直に美玖との結婚の意思をサトミに伝える。サトミが別れに応じない場合はDカンパニーが出て行く。別れのための条件を聞き、慰謝料を含めて話を付けると言う手はずだった。いわゆる弁護士の役目をDカンパニーがするのだ。
 だが結城はサトミの場合は気持ちが楽だった。前二人がすんなり片が付いたこともある。修羅場になりそうならDカンパニーが片をつけてくれる。交渉するのがアヤなのか、カブラギなのか分からないが、Aプランを契約してあるのだ。確実に100%成功させてくれる筈だ。
 結城は女と会うときは自分のマンションは使わなかった。鉢合わせになると困るからだ。いつも女の部屋か、ホテルを利用していた。
 サトミは実家暮らしだった。だから彼女と会うときはホテルを利用した。
 いつものホテルで待合せが決まる。
 先に部屋に入ったサトミからショートメールが届いた。部屋番号だ。受付を通さず部屋へ直行した。ドアをノックする。しばらく待たされ中からドアが開いた。サトミはシャワーを浴びていたらしく、裸にバスタオルを巻き付けたままだった。
 結城はこの女に未練はなかった。身ぎれいに着飾ることに金を惜しみなく使うタイプだ。この日も肌を磨き、いい香りの香水を身にまとい、シャワーを浴びて結城を待っていた。
 入ってきた結城の表情が硬かったためか、サトミは何かを察したようだ。ストレートに訊いてきた。

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