5 女王の臨終の言葉
わたくしは知っている。お前があの鏡に、女として数えられた理由を。口にするのもおぞましい、たかだか七つの子供が女になるのに、どのようないきさつがあるか、わたくしとて想像がつかないはずもない。お前の貞操を奪ったのは、おそらくは父君の王様でしょう。あの方の情欲にわたくしはずっと前から気づいていました。
わたくしはお前が憎い。王様を罪におとしいれ、わたくしから世界一美しい女の座を奪ったお前が憎い。わたくしはお前を滅ぼすために舞った。呪いの死の舞踏を受け取るがよい。……
6 白雪姫の遺言
故郷の国も、夫の王子様の国も滅んで、わたしを慰みものにしたおとうさまも、嫉妬ゆえにわたしを殺そうとして殺せなかったおかあさまも、もうこの世にはおりません。わたしのすべてを愛してくださった王子様も戦場でお亡くなりになりました。今となってはすべてが数十年の時のかなたです。
わたしに罪があると思いましたか?
ただ存在していただけで男の方を惑わしたのは、わたしの罪だったでしょうか。わたしはそれが今もわからないのです。あなたはどう思われましたか。
わたしは山に抱かれ、小人の涙に見送られて、何の罪も物思いもなかったあの懐かしくうるわしい子供時代へと、これから永遠に参ります。
あなたとも、これでお別れです。
けれど世界で語られるおとぎ話のどこかで、またお会いできるかもしれませんね。