小説

『どくサイト』夢遊貞丈(『どくめし』)

―おお、それは頼もしい!―
―それじゃあ、害悪な老人をあなたが鉄槌を?―
―ええ。それに実は、既にもう、その地域で〝薔薇の模様〟が付いている扉のある家も特定しました―
 ちょっと待って……何を言っているの?
―それなら、わたしも手を貸しますよ。実行はいつがいいですかね?―
―おお! じゃあ、自分も! ああ、楽しみですね!―
―それでは、○○日に実行しましょう。××駅にお昼集合でいいですか?―
 だめ、ダメ! その駅は間違いなく、うちの最寄駅なのに何で?!
―了解―
―はーい―
―それでは、○○日に―
 ○○日って……ああ、今日だ。お母様は……食後のお散歩に出かけてしまっている……!
 ちょっと待って、え、もう間に合わない? そんな、そんな!
 どうしよう、私に出来る事は何? 今からお母様を探しに? ううん、その前に、遅いかもしれないけど、サイトに書き込みを……!
『すいませんごめんなさい1 お母様は私が思っていら用な悪い人じゃありなせんでした! 勘違いでしたごめんnなさいやめてくだあい!!』
 手が、手が震える……どうしよう、えっとお母様の行きそうな場所は……いや、家を出る時に狙われてしまっていたらもう既に……いや、ダメ、そんな悪い方に考えてはダメ。きっとまだ大丈夫、大丈夫だから!
 えっと、とにかく外に出なくちゃ、用意するものは、何か武器になる様な物を持って行ってお母様を守らないといけない? だとすれば何を持って……ダメ、足も震えてきた。
――ピンポーン。
 不意に、家の呼び出しチャイムが鳴る。誰か来た? 誰? 嫌……出たくない。
「どうも、こんにちはー」
 誰かは分からない。でも、とんでもない事をした筈なのに、声は軽々しい。
「奥さん。ご在宅でしょう? 奥さん?」
 ああ、もうきっと手遅れなんだ。ドアの向こうには私の知らない人間が居て……
「奥さん、開けて下さい。奥さん」
 私の知らない誰かが、扉の向こうに、お母様は、私の知らない、もう遅い、扉の向こうの誰かに……
「奥さーん! ごめんなさいね、奥さーーん!」
 私の知らな……い……?

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