小説

『どくサイト』夢遊貞丈(『どくめし』)

「な、なんでも無いんです! あ、と、私、お掃除に……」
「あー、いいよいいよ、食事して、洗い物して、それですぐに掃除なんて。むしろ、最近はなんだか掃除に気合が入りすぎてて、逆に暮らし辛いだろ……まったく……」
 それは、お母様が……
「いや、きっとあたしのせいだね。今まで辛く当たって……悪かったよ。あんた、本当にいい人だね。こんなあたしに良くしてくれて」
 そんな事無いんです、私は……あんなサイトに……!
「それ終わったら、机に友達から貰った珍しいお菓子があるからね。お食べよ」
「ありがとう……ございます……」
 そうか、私が勘違いしてただけなんだ。今までは、私もお母様に対して苦手意識があったから、自然と確執が生まれてしまっていたんだ。でも、私がお母様に優しく接する事で、お母様も私に歩み寄ってくれた。最初から嫌な人なんかじゃ、なかった。
「ん……おいしい」
 私は、お母様から貰ったお菓子を食べながら、涙を流してしまっていた。笑いながら。
 ふふ、そうね、
(―毒でも盛るつもりなんじゃないですか?―)
 そんなわけ無い。とても美味しいお菓子だ。少しでも「そんな事もあるんじゃないか」なんて思ってしまった自分が可笑しかった。また、罪悪感もあった。
「うん、あのサイトの人達にちゃんと弁解しないと」
 そうして、私はパソコンを立ち上げて、サイトへアクセスした。が、
「え……?」
―あれ、今日も奥さん書き込んでないですね―
―絶対何かあったんですって!―
―皆さん、安心してください。ワタシが今、動いてますから―
 会話は更に続いていた。
―そういえば、何かしているんですか?―
―是非、あの悪魔みたいなBBAから奥さんを救ってあげて下さい!―
―ええ。今までの奥様の書き込みで、地域は特定出来ています。あの日、お遊戯会のあった場所、奥様の買った〝最新の靴〟の売っている場所も限られていますし―

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