幸太郎の中で、何かが崩れた。机を拳で叩くと担任を、その背後にいるアカネたちを睨みつけた。
その瞬間、馬鹿騒ぎはクライマックスを迎えた。
「さあ、お墓まで運ぶんだ」
アサトがそう叫ぶと、幸太郎の腕を掴んだ。幸太郎は抵抗しなかった。
クラスの男子が、いや女子の何人かも手伝って、幸太郎を担ぎ上げた。幸太郎は天井近くまで持ち上げられた。
ケイタの読経は続く。ケイタを先頭に幸太郎を持ち上げたクラスメイトたちは、そのまま教室を一周して歩いた。
宙に浮きながら、幸太郎は白い天井をぼんやり眺めていた。空を飛ぶとはこんな気持ちかもしれない。
「さようならー」
アカネの掛け声を合図に、幸太郎は自分の席へと落とされた。
ふっと、憑き物が落ちたようになって、この馬鹿騒ぎは終わった。
幸太郎は何事もなかったかのように自分の机に、朝来たままの姿勢で座っていた。
「さあ、先生、授業、授業」
アカネが朗らかな明るい声で言った。
「ああ、そうだな。さあ、授業始めるぞ、席つけ席」
我に返った担任は急いで振り向くと黒板に向かった。