小説

『Kのはなし』山田蛙聖(『三年寝太郎』)

3 復活

「さあ、約束の日が来るよ。三年だ。起きなよ。復活だ」
 悪魔はそう囁いた。

「ねぇ、シュンスケ、幸太郎くん学校来たんだって?」
 トーストを手渡してシュンスケの母親が尋ねた。
「らしいよ。昨日の夕方ちょっとだけ顔だしたらしい」
 シュンスケはなんとなくその話題。幸太郎の話題には触れられたくなかった。
 なんとなく罪の意識があったから。
 幸太郎はシュンスケの幼馴染で小学校中学と同じ学校に通っていた。ガキ大将といったところの幸太郎が親分で、シュンスケはその子分といったところだった。
 その幸太郎が中学に入った途端、学校に行かなくなり家に籠ってしまった。そんな幸太郎をなんとか家から引き出そうと、その大役の一端を任されたのがシュンスケだった。
 最初のうちはシュンスケも朝、登校前に幸太郎の家に寄って学校へ行こうと誘った。しかし、幸太郎は出てはこなかった。
「寝てばかりいるの。まるで死んだように寝ているの」
 幸太郎の母親は、そう寂しそうにシュンスケに告げた。

 時が経ち、しだいにシュンスケにも新しい中学校の生活リズムが出来てきた。その中に幸太郎はいなかった。だから、自然と幸太郎とは距離が出来ていた。その距離をいまさら縮めるのもシュンスケにはなんとなく億劫だった。小学校の時のように親分、子分の間柄に戻るのには気が引けた。
 

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