小説

『Kのはなし』山田蛙聖(『三年寝太郎』)

「ごめんごめん。言葉が足りなかった。いっそ死んだつもりになればいい、そう言いたかったんだ。一度死に、そして復活する」
「なんだよそれ」
 また悪魔はほんの少しだけ笑った。
「昔むかしある男がいた。そいつは仲間に裏切られて犯罪者として捕まってしまった。昔だからそのまま死刑さ。磔の刑だ。だがその男はその三日後復活した。そしてその男は神となった」
「俺もそうなるのかい」
「もちろんだよ」
 悪魔は今度はたしかに笑った。冷たく笑った。
「じゃあ、俺を神にしてくれるのかい?」
「お望みとあらば」
 幸太郎は悪魔の言うことなど信じていなかった。頭のおかしな奴だと思った。だから、鼻で笑いながら悪魔の言葉に付き合ったつもりだった。
「じゃあ、神にしてくれよ」
「ああ、すみません。神にはなれません。神の代理または神のような存在にはなれます」
「また言葉が足りなかったのかよ」
「すみません」
「じゃあ、その神の代理でいいよ。そしたらクラスのみなも、誰も俺を見下す奴はいないだろう」
「よろしいです。ではあなたの願いを叶えます。あなたは今夜死んで、三年後復活します」
「えっ、三年? 三日後じゃないの」
「人には適正というものがあります。それに昔より現代はより複雑な社会です。そう簡単にはいかないのです。三年間辛抱なさって下さい」
「ほんとに三年待てばいいのか」
「ええ、約束します。三年辛抱できる素質をもつあなただから可能なのです」
 

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