小説

『Kのはなし』山田蛙聖(『三年寝太郎』)

 なんとなくシュンスケは怖くなった。
 学校では誰もK、つまり幸太郎の事はひとこも口に出さない。それなのにネットの世界では熱狂的にKを崇める者たちがこれほどいた。その差に今更ながら気味の悪さを感じた。
 さらにシュンスケを怯えさせたことがあった。それは一つの書き込み。シュンスケにはその書き込みが誰によるものか分からなかった。そこには、
「Kは神になった。
 Kが次にやることはなに? 祝福? それとも復讐?」

 ネットの世界が学校の世界を侵食しだした。噂がほんとうになった。
 3組のケイタが事故に遭った。歩いていた歩道に車が飛び込んできて、そいつに轢かれたのだ。運転手は急に意識を失ったのだそうだ。ケイタは今でも意識不明だ。
 ヤマトは幸太郎のクラスメイトで、三年前幸太郎をイジメたグループの中心のひとりだった。
 さらに不幸は続いた。
 幸太郎が学校へ再び登校しだした。その当日の朝。
 アサトが学校のベランダから落ちたのだ。
 学校の4階にある図工室の資材置き場から落ちたのだ。一瞬、自殺? と誰もが思った。その資材置き場は三年のクラスの階にあり、ケイタ、アサト、アカネたちがよくたむろしていた場所だった。窓には張り出した鉄格子がはまっていて、そこによく腰掛けていた。その鉄格子が外れて座っていたアサトが落ちたのだった。
 アサトは助からなかった。即死だった。
 学校中の生徒たちは、畏怖の念を持って、復活した幸太郎を迎えたのだった。
 

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