『選ぶって上から』
志水菜々瑛
(『花いちもんめ』)
ある日先生が告げた。「今日から花いちもんめは禁止です」禁止の理由は、いつも最後の一人にミチを残したから。先生からの通告で5年2組の花いちもんめブームは過ぎ去ったが、中学生になったある日、再び花いちもんめをすることになる。
『竜宮城は海の底』
月山
(『浦島太郎』)
浦島太郎に助けられた亀は、彼を竜宮城へ招待した。だが竜宮城は海の底、浦島は呼吸もできずに溺れてしまう。海底で暮らす亀も乙姫も、彼の死の理由を理解できない。なんて哀れな人間、なんて儚い命。どうして死んだのだろう、かわいそうに。
『空音』
太田純平
(『琴のそら音』)
会社の受付嬢が38度の熱を出して休んだ。ただこれだけの話である。しかし今のご時世が――新型のウイルスが蔓延している昨今の事情が、たった一人の欠勤に物語を与えた。
『なめるなよ、そこの女』
真銅ひろし
(『かえるの王さま』)
地味で目立たない一男は、ある日学校で評判の美女が困っている所を助けてあげた。そのお礼にデートの約束をしたが、なかなかその約束が果たされる事はなかった。上手い事利用されただけだと憤慨した一男の友達は、その美女を問い詰める事にした。
『蚊』
永佑輔
(『蚤と蚊』)
お盆。山田は女幽霊を発見し、見せ物にしようと目論む。そのとき蚊に刺された。「爪で十字を付ければかゆみがなくなる」と幽霊。山田は言う通りにする。と、幽霊は薄くなる。キリスト教者でもないくせに、十字を見たために消えそうなのだ。幽霊は「セッセとお働きなさい」と言って消えた。
『望み』
小山ラム子
(『シンデレラ』)
一緒にいる友人からの扱いに違和感をもちながらも我慢し続けていた希美。しかし、自分を大切にしてくれる相手との出会いから、思いに変化が生じてくる。
『まちがった林檎と水曜日くん』
もりまりこ
(『白雪姫』)
ある日、白井家の玄関先に林檎が届いた。それも間違った置き配で。それを知らない芳雄は、その林檎を齧って空腹をしのいでいた。そして再び置き配が届く。またもや間違った置き配で。袋を破いて見ると、それは姿見の鏡だった。後日白井家には立て続けに電話がかかってくるようになっていた。
『人間瓶詰』
柿沼雅美
(『瓶詰地獄』)
私は私の心をはっきり分かっていながら、神様の罰を恐れて何かを言うでもなく、何かをするでもなく、兄とは似ても似つかない男たちと寝た。その中に兄以上の奇跡を見つけることができるような気がして、その中に兄以上の魅力があることを願って。そして自分が汚れるたびに清純を瓶に詰めた。
『ブレーメンで告白しましょ』
洗い熊Q
(『ブレーメンの音楽隊』)
明美の参加する劇団の演目は影絵の「ブレーメンの音楽隊」。だけど今日は何時もと状況が急変。不安に不満だらけで劇が始まるのです。