「よぉ、耕平くん」
栄治は、微笑んだままで俺に歩み寄ってきて、挨拶をしてきた。
「あ、ああ。久しぶり」
最後に会ったのは、五年前。肩まで伸ばした少しうねっている長髪。二重のぱっちりとした目。開襟シャツにデニムパンツを穿いている。そのままだった。
栄治は、小学校時代からの友人だった。中高も一緒で馬鹿も一緒にやった。成人式の実行委員も一緒に務めたし、日が昇るまで一緒に吞んだりカラオケしたりすることもザラだった。俺の青春の思い出、ほぼすべてに栄治が絡んでいる。
栄治の結婚式では、俺が代表して友人代表のスピーチをした。
「そんな顔をするなって。旧友に会うことが、そんなに驚くことか」
「だって……」
俺は言葉をひっこめた。一度息を呑んだ。
口にしてはいけない気がした。
栄治は微笑みを崩さない。
「だって、どうした? お前は死んでいるって?」
その通りだった。
栄治が死んだのは、五年前のことだった。
高校時代からの恋人と結婚して、子どもが生まれてしばらくのことだった。職場の飲み会で深酒をして、道をフラフラと歩いていて、軽自動車に衝突された。実際には掠めた程度だったが、転んで縁石に後頭部をぶつけてしまった。
打ち所が悪かった。救急車で病院に搬送されたが、翌朝ベッドの上で息を引き取った。
まだ二五歳だった。
葬式にも参列したが、どうしても栄治が死んでしまったという実感が湧かなかった記憶がある。正直、数年過ぎても同様だった。いつかひょっこり姿を見せるのでは、と思うこともあった。
とはいえ、実際に目の前に栄治が現れて俺はひどく動揺していた。
それはありえないことだった。
俺が言葉を失っていると、栄治が続けた。
「懐かしいね、ここ。小学生んとき、よく遊んだよなあ。……ま、耕平くん、ちょっと歩こうよ」
拒否は出来なかった。