小説

『死んだレイラと魔法使い』本間久慧(『シンデレラ』)

ツギクルバナー

 ぼくは寝ているとき、眠りながら笑っているそうです。以前つき合っていた彼女に、気持ちが悪い、と言われたことがあります。たぶんぼくは、良い夢でも見ていたのでしょう。目が覚めたときには、全て忘れているのですが。

 その彼女に、あなたって、幸せな人ね、とも言われたことがあります。ぼくも、ぼくって、幸せな人間だな、と思います。

 ぼくは、会社員です。毎朝、電車に乗って通勤をしています。都心の駅はどこもそうだと思いますが、ものすごい人です。でもみんな、ちゃんとマナーを守っています。

 改札口が混んでいるときも、ホームで電車を待っているときも、きちんと、おとなしく並んでいます。とても立派だと思います。

 電車がホームに入ります。所定の位置でピタリと止まり、ドアが開きます。ですが、誰一人、降りようとしません。びっしりの、人です。まるで彼らが、一個の固体のようです。

 一瞬、こりゃあ、乗るのは無理だな、と思います。でも次の瞬間、みんな一斉に、そんな車内へと流れ込みます。優しい駅員さんは、文字通り、ぼくらの後押しをしてくれます。みなさんのおかげで、ぼくは毎朝、予定の電車に乗れています。ありがたいことです。

 電車は数分の遅れを謝りながら、ゆったりと発車します。電車の中は、ギュウギュウの、キツキツです。満員電車なんて大嫌いだ、と言う人も多いですが、ぼくは、そうでもありません。周りの人に支えられ、自分で立っている必要がないから、とても楽だと思います。

 ときどき、非常に混んでいるときは、自分の足が電車の床に着いていないことがあります。そんなとき、ぼくは、わぁ、浮いてる、と、ちょっと楽しくなります。

 電車には、地上の電車と地下の電車があります。ぼくは、地上の電車を利用しています。電車に乗っているとき、ぼくは、よく窓の外を見ます。

 たくさんの人の頭の間から見る景色は、なかなか風情があると思います。ビルばかりですが、天気の良い日の空は、やはり青いです。
 

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