「ジェシカと連絡が取れなくなったのはいつだ?」
ジェシカ・フェーレンは“ムーンライト”の娼婦だった。“ムーンライト”はヤクザがよく使う。不動産、金融、薬、そんな取引で懐の暖かくなった男たちが女を抱く。冷えた心と体を温めるために。
「先週の金曜日だ。デカイ取引があったみたい、それっきりだ。D・ブレスの取引がある時だけ、連絡をつけるようにしていた。もうすぐ地図が出来上がるはずだったんだけどな。
──D・ブレス。元々はダークタウンの裏路地を曲がれば誰にでも手に入れることができる
「元々、D・ブレスがカフェインと混ぜると効果が上がるってのは、ダークタウンじゃ常識だったんだ。クラックとコーヒーで目を覚まして、煙草をふかしながらボロボロになるまで働いて、夜はスコッチを浴びるように飲んで泥のように眠る。そしてまた、クラックとコーヒーで目を覚ますんだ」
「そのD・ブレスがジェシカを殺したんだ。ドラッグでハイにされて、わけがわからなくなったまま冷たくなって死んだんだ」
「今はそれ以上想像するなよ、ランド。捜査から外されたくなければな。まずはジェシカが会った客を洗い出す。それから、書きかけの地図を完成させる。死んだジェシカに誓って、必ずドラゴンの巣穴を燻りだすぞ」
痩せぎすのスーツ姿の白人男性/*7*-***-****/ヴィクトル・ボーマン/証券会社のビジネスマン──若いブロンドの白人男性/***-***-*3**/ロイド・ディズレーリ/ブラウネル・ファミリーの若手──茶髪のアラブ系男性/アーネスト・アラタ/***-***-***4/大手企業のプログラマー──。
“ムーンライト”のオーナーから押収した監視カメラの映像──ジェシカが相手をした男の数々/客がジェシカを指名する度にそいつの素性を確認/電話番号から──“ムーンライト”のシステム/店側から指名した女の子の番号を渡される──そのままホテルにしけこむ/デート気分を楽しむ/ジェシカの仕事用の携帯電話に残された数字の羅列。
違和感マックスの客──年端もいかない少女/アッシュグレイの髪/フロント係にふわりとお辞儀=場違いな品の良さ/慌てるフロント係/構わず少女はジェシカを指名/怖いもの知らず=何かに守られている雰囲気。