小説

『Ignite』木村浪漫
(inspired by小説『マルドゥック・ヴェロシティ』)

 予感があった。この少女はギターと心中する。本物なら誰しもがそれをやるように。俺のようにそいつを手放したりはしないんだ。

 
 ──書きかけの地図の完成。
 竜の吐息ドラゴン・ブレスが吐かれる前に取引現場を強襲──ギターとアンプを担いだ少女を連れた警官たちの猛進・爆音を響かせながら取引現場に突入/相棒は笑いながらフォロー=仕事が手っ取り早くなっていいな/怯えるチンピラ共──あいつらシラフでイカレてやがる/まったくもって同感。
 ──連邦検事からの連絡。
 滅茶苦茶な捜査の後ろ盾──フレデリック・ウォーマン連邦検事の根回し=ミラの捜査権/書類上はおれたちと同じ権限を持っているって訳だ/いったいどんな汚い手を使ったものやら/ついでのようにヘッド・ハントを受ける/連邦の検事どもはおれたちのノウハウを知りたがっているのさ。おれたちのように地元のコネがないからな/奇妙な納得。実地訓練オン・ザ・ジョブトレーニング。ミラにそれを覚えさせようってことか/おれたちのコーチングを見極めているのかもな/俺は陽気な相棒を久しぶりに見た気がしていた。
 ──ドラゴンの最後の吐息。
 残った売人を泳がせる/当然のように減った仲間を補充しようとする/軍人崩れに接触/良い仕事がある。ちょいと腕っぷしが必要な、手に汗握るってやつが/元軍人らしき大男の革手袋が金色のネズミに変身ターン/くそっいかれた軍属のフリークス共め/交渉は決裂したようだ・出口で待ち伏せる・ちらりと大男の顔を覗く・押し殺した無表情の先にひどく傷ついた繊細な心が見えた。
 「よう、ドラゴン。会いたかったぜ」売人の肩を親しげに抱いてそのまま路地裏に連れ込む/アーネスト・アラタの写真を顔に押し付ける/こいつにD・ブレスを売ったのはお前か/知らねぇ・なんのことだ・誰のことだ/売人の決まり文句/俺は売人の懐を弄る/自分で売ったものは自分で食ってもらおうか/売人の頭を振る/ミラ、やれ/耳元で爆音が鳴り響く/くそくそくそ頭の中で爆発がクソ/ミラ、もう一度だ/脳味噌を引きずりださないでくれ目玉がコンクリにすり潰されちまってるんだやめてくれ/ミラ、もう一曲頼む/売った売った間違いねぇコイツに売ったなんでも女をハイにして抱きたいんだって/売人が大陸弾道ミサイルを売ったなどとのたまう前に拘束してセダンに放り込む。
 違法薬物の不法所持、準強姦および殺人容疑。これでアーネストの逮捕に必要なカードは揃えた。多少強引ではあったが。

 

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