○選んだ作品:
『復讐』(『桃太郎』)笹本佳史
○選んだ理由:
緊張を高めていく書き方が上手で、自分にはないものでうらやましくなりました。文飾に溺れていない、過不足ない感じの文章は安定感があり、うらやましいです。面白かった。
ブックショートアワード2014の最終候補者の皆様に、ご自分以外の作品のなかで最も面白いと思った作品をアンケートで答えていただきしました!(順不同)
○選んだ作品:
○選んだ理由:
緊張を高めていく書き方が上手で、自分にはないものでうらやましくなりました。文飾に溺れていない、過不足ない感じの文章は安定感があり、うらやましいです。面白かった。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
読後の爽やかさと明るさが印象的だったので、この作品を選びました。欠けているのは数えられている物の方ではなく、数えている人間の方である、という発想の転換が新鮮でした。さらに、欠けていることを否定し矯正するのではなく、受け入れながらゆっくり前に進んでいけばいい、という解釈も現代的で、その点でも【Re-story】された作品と感じました。作品内では具体的な曲名には触れていないので、映像化の際にはどのようなレコードが登場するのか、その観点からも楽しめる作品だと思います。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
綿密な取材、豊富な知識、流暢な語り口で読みやすく、いっぱいの楽しさに溢れている作品です。スタチュの「静止」とスケボ逃走の「躍動」、三十三間堂の「静謐」と七条通りの「喧騒」、歴史的舞台の上で最新のカルチャーを材料に登場人物を動かしていく、こうした見事な「対照」が際立っており、闇から眼をカッと開けた瞬間にそれらすべてが反転。色彩に満ちた映像が浮かんでくる小説で、映画を見た後のような爽快感が読後に得られました。最高のエンターテイメント小説です。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
今まで選ぶ立場に立ったことがなかったので、新鮮な体験でした。そして本当に困りました。うんうん唸って絞り込み、迷いに迷って選びました。現代版賽の河原「リバーサイド」。軽快でテンポのよい文章で最後まで一気に読めました。一気に読めた、つまりそれだけの吸引力と説得力(魅力)があったということです。高齢化社会のブラックユーモアにオチはどうなるのかと思いましたが、なるほどそうきましたか。孫、息子、父、祖父揃っている中に女性が見当たらないのも「女性が強くて長生き」ということなのでしょうか。となると現実世界では孫、娘、母、祖母のリアルバトルが繰り広げられていたりして……。楽しませていただきました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
不思議な作品ですが、確かな抜群の文章力を背景に、「どこにもいかない・いけない主人公」の永続的な嘆きのようなものが、ばかばかしくもテンポよく展開される様には、哄笑しながら、ぐいぐいと引き込まれていきました。
この作品は冴えない中年男性が自分をかぐや姫であると仮定、夢想することのよって生じる現実との隔たりを書いておられます。
それは滑稽でありつつ、どこか悲しく哀れな文学的な情緒を生み出していると思いました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
爽快な後味の悪さに痺れました。
ここぞとばかりに的確に使われた「どんぶらこ」という表現に、鳥肌がおさまらなかったです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
私も本当の自分は別にあり今の自分は世を忍ぶ仮の姿だと夢想することがある。だがそれは結局の所、現実逃避に他ならなく、もっと言えば今の現状に満足を得ていないからだと推測する。筆者は女性ではなく敢えて四十の男性に自分はかぐや姫であると妄想させた。ここに奇天烈な面白さを感じる。汚い風貌の四十の男が自分をこの世の者とは思えぬ絶世の美女かぐや姫だと思い込むのだから相当無理がある。しかし、その無理を逆手にとったからこそ物語をより面白くしている。かぐや姫に起こる出来事と自分とを無理矢理こじ付け重ね合わそうとする様は滑稽でともすれば気持ち悪いオッサンだがストレス社会に生きるサラリーマンの悲哀を感じさせる作品だ。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
まるで珈琲の中でふわりと羽を広げるミルクの様に、日常を漂う何気ない会話。近いのにそれ以上は近づけない2人。小さなレコード店は愛と切なさともどかしさで溢れている。
私も誰かを愛した時、その震える背中にそっと触れてみたい。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
この作品は最終候補に選ばれる前、『赤いろうそくと人魚』が好きなこともあり読みました。完成度が高く、最後まで楽しく読むことができました。そして何より、魚吉の存在のおかげで、人魚が少しでも報われたようで、良かったです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
疾走感と躍動感と高揚感。そして、悲痛さ、馬鹿さ、不器用さに引き込まれました。
文字に起こされた関西訛りに、なぜだか異世界感。しかしそれと同時に、三十三間堂は異世界などではないどころか、いま私のいるこの場所にほかならないとも気づかされ、私自身もチューすけであると感じさせます。
相反する二つの感触の間で、とても心地よい時間を過ごさせていただきました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
レコードを皿と呼ぶのはヒップホップ界隈だが、そのイメージに反する精緻な文章に惹かれた。欠如と再生という独自のテーマを、エンタメの色が濃い『番町皿屋敷』の骨子を生かして作品に仕上げた点、そして原作のオマージュを(単なる小道具としてではなく)ちりばめつつ、クライマックスではそれを大胆に裏切る構成において、本来の意味でのパスティーシュ作品だと言える。テーマの本筋からは逸れるのだろうが、“何かを好きだということと、それに関して詳しいということとを安易に等号で結ぶのは、どこか危うい行為であるような気がしてならなかった”という一文は、氾濫する情報の中で生きる私たち読者の共感を広く呼ぶメッセージだと思う。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
町田康さんっぽくて気に入りました。もしも町田康さんがパンクを始める前に執筆を始めていたら、こんな小説を書いたかもなぁ、と思いました。「世界を動かしたい」とは言わないでしょうけど。語り口がいいですね。関東出身だからでしょうか、関西弁のリズムには惹かれます。同じ関西なら織田作之助さんの小説なんて堪らないです。すごく音楽的。読んでいるけれど耳心地がいい。私はバンドマンになると思っていたような人間なので、リズムがあるとオッと思います。「ザリザリとスピードを上げ、」なんて一文も好きですね。