『時には、必要、かもしれない』
真銅ひろし
(『鉢かづき姫(寝屋川市)』)
超が付くほど過保護な父と兄がいる。そのせいで高校二年生になってもまともな恋愛が出来ない。しかし、そんな窮屈な生活の中で私は密かに恋をしている。
はたしてこの恋は実るのか?
『嘘とウソ』
宮沢早紀
(『早池峰山の神様(岩手県花巻市)』)
婚約者の母・幸子はかわいいという理由で卯年と偽っていた。婚約者である直樹からこの話を聞いた薫は、自分とタイプの違う幸子を理解できずにいた。二人きりになった時に幸子から嘘の真相と早池峰山の言い伝えを聞いた薫は、薫なりの解釈を示すことで幸子とうまくやっていく自信をつけるのだった。
『チューリップの花が』
太田純平
(『大工と鬼六(岩手県)』)
修学旅行の肝試しで誰とペアを組むか。思春期真っ盛りの6年2組に正念場がやって来た。先生いわく「男子と女子、二人で一組です。明日までに決まらなかった子はクジ引きになります」とのこと。男子の吉田はクラスで一番人気の入内島と組みたかったが、ガキ大将の小野も彼女と組むと宣言して――。
『友達リクエスト』
山本
(『因幡の白兎(鳥取県)』)
ある日、兎和のSNSに友達リクエストが届く。それは高校時代の同級生、美琴からだった。昔からの親友なんていいなぁと羨ましがる勇一に、兎和は自分が美琴や仲間たちを騙した過去を打ち明けていく。
『むくいる』
ウダ・タマキ
(『鶴女房(岩手県)』)
ミュージシャンを目指して上京した俺だったが、日の目を見ることなく十年の月日が流れた。さらに追い打ちをかけるように訪れたコロナ禍の時代。SNSを使って動画で発信をしてはみるが状況は変わらない。それでも俺のアップする動画にいつもコメントをくれるakoという一人の女性がいるのだった。
『謝辞』
斉藤高谷
(『はなたれ小僧様(熊本県)』)
長年連れ添った妻が突然いなくなった。残された〈私〉は慣れない家事に悪戦苦闘しながら自分の何がいけなかったのかを思い返す。
『レモン』
望月滋斗
(『檸檬(京都)』)
えたいの知れない不吉な塊に心をおさえつけられている私は、ある八百屋で不思議なレモンに遭遇する。そのレモンは、自分が頭で思い描いた通りに姿形を自由自在に変化させることができるというものだった。私はあらゆる妄想に耽りながらそれを駆使し、その不吉な塊に立ち向かおうと奔走する。
『とある学生の憂鬱』
睦月紗江
(『鶴の恩返し』)
大変困ったことになった、というか現在進行形で困っている。どれくらい困っているかというと、試験の直前になって自分の必死にした勉強範囲と実際のテスト範囲がずれていたことがわかった時くらい困っている。いやまあこの場合は諦めるほかないのだろうけど。
『みもろの恋』
サクラギコウ
(『万葉集 三輪大神神社の歌(奈良県三輪山)』)
10才の時、登ったことがなかった神の山三輪山に登ることになった。大好きな翔が登ると知ったからだ。しかし山頂で翔が杉の木の下に時計を埋めるのを見てすぐに掘り起こし持ち帰る。それを知った翔は怒り、二度と口をきいてくれなくなった。しかし成長し奈良に帰ってきた翔から驚きのことを聞くことになる。