『天国か地獄か、どっちもいやだ』
平大典
(『閻羅』)
目が覚めると、僕は見知らぬ河原に立っていた。困っていると、老人が現れて、閻魔のインターンを受けてください、と言われる。言われるがまま、魂を裁く羽目になったが……。
『彼の猫』
斉藤高谷
(『山月記』)
久しぶりに実家に帰った〈わたし〉は、幼なじみのトモミツ君が猫を飼いだしたことを耳にする。長らく会っていない彼の様子が気になり訪ねてみると、家は真っ暗。すると闇の奥からトモミツ君の声が聞こえてきて、猫になったと告げてくる。
『三十年の時を越えて』
ウダ・タマキ
(『浦島太郎』)
高校二年生の浦添太郎は、隣のクラスの亀井守がクラスメイト達からいじめを受けている場面に直面する。そんな亀井を助ける太郎。それをきっかけに二人は仲良くなった。しかし、高校卒業の日を迎え、二人の別れがやって来た。「卒業祝い」として亀井が太郎に差し出したのは黒い箱だった。
『娘の家』
吉岡幸一
(『リア王』)
妻を亡くし、家をも失った剛志(八十三歳)は娘(三姉妹の長女)の家で暮らし始めました。友人の連帯保証人になり家を失ったことを引きずっていた剛志は、娘の家に落ち着くことができませんでした。夏のある日、家を出た剛志はかつて自分の家が建っていた場所に行き、そこで亡き妻に会うのでした。
『王 Sit!』
柏原克行
(『裸の王様』)
権威や権力とは誰の目にも等しく映るものではない。見る者の視点が違えば全く異なる性質を成す形無きモノである。戦王カールによってその権威を象徴するこの世に二つとない玉座を作るよう命じられたキントレイ随一の家具職人ゴッチは弟子と共に前代未聞の玉座を作り上げる。果たして王の反応は?
『井の中の蛙は大海の夢を見るか?』
室市雅則
(『井の中の蛙大海を知らず』)
井戸の中で生まれ育った蛙。ある時、『海』という場所があることを知った。好奇心が旺盛な蛙は、『海』に向かおうと井戸を旅立った。
『注文の多いお弁当』
木口夕暮
(『注文の多い料理店』)
ある会社員が、妊娠した妻がいながら部下と不倫していた。部下はつわりで苦しむ妻に代わって手作り弁当を届けてくれる。弁当のおかずを予知夢で見るようになった会社員。部下に不倫をバラすと言われた夜に、また予知夢を見る。