『唇』
金谷沙織
(『草枕』)
美大を目指している主人公。しかし受験はなかなかうまく行かない。絵画教室に通うも、展示会の題材すら決められずにいるのだ。ぼんやりと過ごしていたある日、不思議な雑貨屋を見つける。そこで彼は「唇」が魅力的な女の子と出会うのだった。その日から彼の人生は大きく動き始めて…!?
『透明な魔法』
森な子
(『オズの魔法使い』)
女の子、という枠に閉じ込められた自分に違和感を持つ主人公は、耐えられなくてさぼってしまったプールの授業の間に、不思議な夢を見る。夢の中で出会った美しい魔女は、自分がどうありたいかは、自分で決めることができる、というが……
『AIしてる』
村田謙一郎
(『かぐや姫』)
家電量販店会長の宅間雄三と妻の保子は、ウォーキング中に出会ったフランス人のアイと名乗る女を助ける。雄三の店で働き始めたアイは、驚異的な能力を発揮し、美貌もあって幾人もの男から求愛されるが、なぜかドラえもんのひみつ道具を要求し、拒絶する。実はアイは未来から来たAIロボットだった……
『亀の甲羅が割れた顛末』
三号ケイタ
(『くらげの骨なし』)
竜宮に仕える亀は、病の乙姫を救うために友人の猿を騙すかどうか悩んでいた。乙姫は幼なじみであり、一方猿は自分の親友と言ってよかった。それは亀の意志では決めようもない悩みで有り、しかし主君の竜王は乙姫を救うための手立てを亀に命令するのだった。
『ドーナツと檸檬』
もりまりこ
(『檸檬』)
カジモトはドはドーナツのドやろ、レは檸檬のレやろうって胸のなかで叫んだ。ドレミの歌が全然わからない。クラスのみんなが高らかに歌うその歌の意味が。そうこうしているうちにカジモトの胸のあたりで異変が起きた。それは1度目の出来事。そして2度目はメキシコのセノーテの泉を見ている時だった。
『・・・の会』
きぐちゆう
(『桃太郎』)
中年の会社員が帰宅途中に拉致、監禁される。身動き出来ない状態のまま、周囲では顔の見えない複数の人間の話声。開放された時、会社員は新たな人間として生まれ変わる。
『耳』
田辺ふみ
(『耳なし芳一』)
私は芳一の美しい耳に心を惹かれていた。平家の亡霊から芳一を守るため、住職が身体に経文を書き込む。その手伝いをしたときに、耳の美しさを損ないたくないため、墨を使わず、水で書く。その結果、芳一の耳は引きちぎられてしまう。それでも、捨てられない執着があった。
『網棚の遊戯者』
間詰ちひろ
(『屋根裏の散歩者』『赤い部屋』)
仕事でコンビを組むことになったイヤミな上司。外回りの移動中、電車ではいつも大きな口を開けて眠っている。智子は偶然手に入れたある薬をその口の中に放り込んでしまいたい欲求に駆られてしまう。