『午前六時、二十インチマン』
豊臣ヒデキチ
【「20」にまつわる物語】
ケツァールの様に優雅で、蝶の様に舞い蜂の様に刺し、フランク・アバグネイルな男。その物語は午前六時にいつも始まる。二十インチの中と外から。
『あひるとたまご』
或頁生
【「20」にまつわる物語】
「こらこら入ったら困りますがなっ」控え目な丁寧語の叱責未満が鼓膜に到達から周囲を見渡し、その矛先が自分だとようやく気づき、苛立ち顔の年配者達の渋い表情に向かって黙って首を竦め、直線で囲まれた外側へ。
『しゅう末より』
高橋己詩
【「20」にまつわる物語】
1997年7の月、天から恐怖の大王は下りてこなかった。世界がおわる、人類が滅亡する、なんていうのは予言の拡大解釈だったのかもしれないけれど、どうであれ、誰もが肩透かしを食らった、そんなしゅう末だった。そして新たに、2020年に世界がおわる、という噂が囁かれるようになった。
『過ぎし日の想い』
紫水晶
【「20」にまつわる物語】
私立夢ケ丘保育園。今の私の勤務先。思い通りにならない子どもたち。うまくいかないクラス運営……。ああ、保育士になんて、なるんじゃなかった。そんなある日、学級崩壊寸前の我がクラスに、不気味な少女『ルリ』がやってきた。
『アリとキリギリスとニンゲン』
高元朝歩
【「20」にまつわる物語】(『 アリとキリギリス』)
生後20日の娘の育児に疲れた私は、産後はじめての外出で訪れた公園で、小さな喋る生き物に出会う。相談相手は働きアリ。働きアリって実は…。
『桃太郎と桃子』
斉藤高哉
【「20」にまつわる物語】(『桃太郎』)
契約更新なしを言い渡された派遣社員の桃子はその日の帰り道、巨大な桃を拾う。家に帰って切り分けると、中からは赤ん坊が。とりあえず食べ物を買いにコンビニへ行く桃子。戻ってみると、そこに赤ん坊の姿はなく、代わりに裸の男が桃を食べていた。
『鬼の営業部長』
金田モス
【「20」にまつわる物語】(『桃太郎』)
鬼のスーパーパワハラ上司、鹿島営業部長より花見宴会の責任者を任じられた桃山太郎。いつもスケープゴートにされているマーケティング課長犬養が入手したネタを使い、その宴会で鹿島部長を懲らしめようと画策する。講釈上手な茂木に頭脳明細な参謀の岸。運命の花見宴会が始まる。
『SFA‐20 ~立ち枯れた脳~』
蟻目柊司
【「20」にまつわる物語】(『ピノッキオの冒険』)
「俺は壊れかけのアンドロイド。もう人間には戻れない」。脳をハードディスク上に再現して頭に移植する。それは優れた頭脳を手にできる画期的な技術のはずだった……。摘出された古い脳は機械に搭載され、地の果てで過酷な労働を強いられる。密かに仕込んだ爆弾が炸裂する時、運命は切り開かれるのか―
『あなたが猫だったとき、あたしは』
もりまりこ
(『猫とねずみのともぐらし』)
あたしはセーターをめくって身体のみずたまもようをみる。DNAのらせんをずっと辿るように。猫田の身のこなしは素早くて。猫田に追われると背中がぞくぞくっとした。あたしの身体のみずたまはぶるぶるっとふるえていたかもしれない。ふたりで暮らしはじめたある日猫田は横領事件をやらかしてしまう。