『父娘の想い』
彰山立夏
北海道の高校三年生・由美は、母・美奈子が仕事で不在の三か月間、父・和彦と二人きりで暮らすことになる。お互いにうまく気持ちを表現できず、次第にすれ違う二人だが、学校での進路指導をきっかけに由美は和彦の本当の想いを知る。そして受験前日、由美は和彦にあるお願いをするのだった。
『風酔い盆』
佐藤剛
岡山駅で私達三人が揃ったのは、事前に決めた時間通りだった。時間にルーズだったのぞみも定刻に来た、という事に私とかおるは顔を見合わせて笑いあった。
『八重ちゃんの小さな家』
末永政和
朽ちかけた家に越して来たのは、ゲージツ家を名乗る旦那様と、子どものように小さくてまめまめしい八重ちゃんだった。不器用ながらも幸せに暮らす二人だったが、ある晩のささいな行き違いから、八重ちゃんは書斎に篭城してしまう。
『4月28日』
浴衣なべ
幽霊である私が公園で偶然見かけた親子は、以前別れた恋人の妻と息子だった。そこに元恋人まで現れ思わず物陰に隠れてしまった私は、つい一家を尾行してしまう。一家の目的が自分の墓参りだと気づいた私は、彼と彼の家族から、忘れていた人間の温かみを与えられる。
『アキと私の湯めぐり記』
ユウリ
午後23:30。ボロアパートの軋む扉を押し開けると、私は倒れこむように玄関に座り込んだ。
『無謀なパン屋計画』
神村友
毎朝美味しいパンを焼いて家族を喜ばせる母が、時折見せる寂しげな表情に優は気づいていた。病気の母が以前のように輝けるよう、優は会社を辞めてパン屋になる決意をし、父と母を心配させる。無計画で無謀な優がひたすら突き進む姿に周りは影響され、次第に家族みんなで幸せになる道を見つけていく。
『蚊遣り』
来戸廉
所用で帰省した娘と一緒に美晴がやって来た。美晴に付き合って買い物に行った帰り、渋滞を避けようと入って抜けた先は、私がかつて片思いしていた同級生の実家の近くだった。実家の喫茶店を手伝っているという噂は聞いていたが、なかなか訪ねることができなかった。これも運命だと、店を訪れるが……。
『泣いて、笑って、味わって』
あまのかえる
二人姉妹の環と美佳。母が亡くなって1か月、二人で母の遺品整理しているところに、母のことを「さつきさん」と呼ぶ若い男性が自宅を訪ねてきた。しかもフランスからわざわざ帰国してやってきたという。この男性は一体誰なのか?母との関係は?環は疑問を抱きながらも、この男性を自宅へ招き入れる。
『祝と恩』
秋和夢境
娘の誕生日。しかし娘は家にいない。それでも祝うひとりの父親。