そうなのだ。屋根裏部屋のことを口に出してから気になってしょうがなかったので、さっちゃんが熱心に窓拭きをしている間、開かずの間を開けに行ったのだ。
「え?!あの、屋根裏部屋…?大丈夫だった…?」
さっちゃん、顔がだんだん歪んできたぞ。
「ええ、それはそれは…。埃がたくさん積もってて、虫もね…。ゴキブリやら蜘蛛やらムカデやらがうじゃうじゃ死んで…」
「やだ!聞きたくない!」
「…なかったのよねー。びっくり。屋根裏部屋、とっても綺麗だったわ。」
開けてみて、拍子抜け。埃すらなかったのだ。
「へっ、なんで…?マサフミさん亡くなる前から、開かずの間だったんでしょ?」
「それがね、こっそりお父さんがあの部屋使ってて。ほら、趣味がレコード集めでしょ。でも、お母さんから捨てなさいって言われたらしくって。隠し場所として、あの部屋に運んでたらしいの。去年辺りから。」
埃や虫の代わりに、大量のレコードが部屋の半分以上を占拠していた。私は早速お父さんに電話をして、問いただしたのであった。
「え、お義父さんが?でも、お店に来てたのも知らないよね。鍵だって、やよちゃん持ってるし。」
「ね、知らなかったわよ。実はあの部屋の鍵、お父さんも持ってるって。なんでも、子どもの頃から遊び場だったとか。ほら、私たちが買取とか行ってて、お店にホリカワ君しか居ないとき、こっそり来てたらしいわよ。ホリカワ君もバンドやってるから、レコードとか好きで、話が合うんだって。」
ホリカワ君は、私たちでお店を始めてから手伝ってもらっているバイト君だ。大学生で、ギターをこよなく愛する青年。髪の毛が赤いのが少々気になるが、雇い主もその昔金髪だったから何も言わない。ちなみに私も、茶髪のボブに緑色のメッシュを入れていたことがある。家族の中では、おじいちゃんにだけ好評だった。
「はー。全然知らないはずだね。ホリカワ君も何も言わないからなー。あ、じゃあ僕も屋根裏部屋に何か隠そっかなー。」
「何それ。確かに、おじいちゃんの民芸品も、おばあちゃんに捨てられそうになったからだった気がする。ま、さっちゃんも私が捨てたくなるような物、考えといてよね。」
「おー、なんか僕たち、ようやく家族っぽいね?」
いえいえ、古本屋を続けたいと言ってくれたあの日から、私とあなたは「家族」ですよ。なんて、口には絶対出さないけどね。
「ふふふ。さーて、今晩テレビ何観ようかなー。私は紅白が観たいなぁ。」
「え…。や、紅白自体はいいけど、やよちゃん副音声つけるじゃん。。歌聞こえないよー。」
「いいでしょ。私の紅白は、副音声がメインなの。」