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『もう一度家族になろう』川村文人


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 そう言われて顔を上げると、確かによそ行きの服を着ている。
「何のサークル」
「短歌の会。前に話したでしょ。毎週土曜日にやるのよ」
「分かったよ。じゃあ、俺は買い物でも行って来るかなあ」
「今夜はみんなでお寿司に行くから、夕方までには帰って来てね」
 どうやら今夜は外食に決まっているらしい。まあ、外食に行くとでも言わないと、子供たちが揃わないということなのだろう。

 たぶん、一年ぶりくらいだ。家族四人で一台の車に乗って出かけるのは。
 別に、嫌い合っている関係ではない。むしろ、昔は仲の良い家族だったと思う。ただ、子供たちが何となく反抗期の年頃になり、話し掛けてもさっぱり会話が成立しなくなってきた。しかも最近の自分は、正月に帰る程度だから、共通の話題なんて、殆ど無い。
 それでも、回転寿司店に入ると、急に仲の良い楽しい家族に変身した。最近の回転寿司は、寿司以外のメニューも豊富だし、注文方法もタブレット端末で実物写真を見ながら注文出来たりするから、ついつい、会話も多くなる。
 こんな時、昔と同じ楽しい家族に戻るから、まだ捨てたものでもないのかも知れないと思うけど、寿司屋を出てしまうと、また元通りの会話の無い家族になってしまう。
 もし、新潟支店に転勤になって、元の家に戻ることになったら、いったい自分の居場所は有るのだろうか。最近は、年に一回会社に提出する自己申告書の転勤希望欄には、「転勤希望無し」に丸印を付けているのだけど。
 寿司屋帰りの車の中、せっかく帰って来たのだから、今回の目的である、晴樹の進学希望を聞いてみた。
「晴樹は来年から、希望先ごとのクラス分けなんだってな」
「ああ」
「文系か、理系か」
「まあ、一応、理系」
「何になりたいんだ。前言っていた医者か」
「ねえ、父さん、それ、幼稚園の頃の夢だろ」
「変わったのか」
「まあ、一応、コンピューターかな」
「おお、コンピューターを作るのか。じゃあ、父さんのお客さんだな」
「違うよ。プログラムの方だよ」
「ああ、そうか。残念だな。一緒に仕事が出来るかと思ったんだけどな」
 正之は冗談のつもりで言ったのだが、晴樹は面倒くさそうな顔をした。
「希望大学名を書いて学校に出すんだろ。何処って書くんだ」
「別に、まだ決めてないけど」
「今度、俺と一緒に大学を見に行くか」
「いいよ。まあ、適当に書いておくからさ」
 晴樹の面倒くさそうな返事で、会話が終わってしまった。
 助手席に座っている瑞希を見ると、ずっと黙ったままスマホを眺めている。そう言えば、今夜は何故か、瑞希が助手席に乗った。いつもは瑠璃子が乗っているのに。どうして助手席に乗ったのか聞こうと思ったけど、何だか聞きそびれてしまった。

 日曜日の朝、正之は早くから目覚めていたけれど、ベッドでゴロゴロしていた。早く起きても、やることも無いし。結局、九時ころに起きて、キッチンへ行くと、瑠璃子が用意したサラダがテーブルに置かれている。あとは自分でトーストを焼いて牛乳をレンジで温めて終わりだ。

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