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『父娘の想い』彰山立夏


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 午後9時。由美が塾から帰ってきた。
「おかえり。晩ごはんできてるぞ。」和彦が玄関に行くと、暗い顔をした由美が立っていた。
「なんだよ、そんな顔して。」
 すると由美は無言で弁当箱を和彦に差し出した。
「あ、弁当おいしかったか?ちょっと失敗したけど、明日はがんばるからな。」
「もうお弁当なんて作らなくていいから!」
「どうしたんだよ、由美・・・。」
「あんなお弁当恥ずかしいから、もうやめて。」
 由美は今にも泣きそうな顔で二階へ駆け上がって行った。
 きっと俺の作った弁当を友達に馬鹿にされたのだろう。そう和彦は察した。確かに無理もない。美奈子が作る弁当はきれいだった。やっぱり俺は美奈子のようにはできない。そう思うと、美奈子がいない三か月が永遠のように思えてきた。
 居間に戻ると携帯電話が鳴っている。見ると美奈子からだった。
「もしもし。」
『もしもし、あなた、何か困ったことはない?』電話越しに美奈子が言う。
「とりあえず、由美にもう弁当は作らなくていいって言われたよ。」
『もしかして失敗した?』
「卵焼きがうまく作れなくてね。」
『ふふふ。そんなことだろうと思った。』美奈子はなぜか楽しそうだ。
「笑い事じゃないんだけどな。」
『大丈夫。別にお弁当がなくたって世の中から食べ物がなくなるわけじゃないんだから。』
「お前、そういう問題じゃ・・・。」
『それより。』美奈子が和彦を遮る。
『出発前に言い忘れたんだけど、来月、由美の学校で進路指導があって、できるだけ保護者も来るようにって言われてるの。あの子きっとあなたにはそのこと言わないと思うけど、ちゃんと行ってあげてね。学校からのお知らせは寝室の引き出しの一番上に入ってるから。』
「わかったよ。そっちはどうなんだ?」
『私のことは心配しないで。じゃあね』そう言って美奈子は電話を切った。
「進路指導ねぇ・・・。」和彦はまた一つ重荷を背負った気分だった。

 次の日から由美は少し早起きして自分で簡単な弁当を作って学校に持って行くようになった。和彦も昼は外食をするようになった。和彦が作った夕食は由美も黙って食べてくれるが、特に反応がないので、おいしいのかまずいのかよく分からない。
 ある日、食卓で向かい合って無言で夕食を食べていると、由美が突然言い出した。
「ねえ、あの話、考えてくれた?」

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