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『亜津美の受験』曽我部敦史


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 結局、朝ごはんは残してしまった。母親に悪い気もしたが、無理に食べて途中で気分が悪くなったらそれこそ最悪だ。歯を磨くと出かける準備を始めた。相変わらず頭はボーッとしたままだった。
 時計を見るとすでに出発予定時間を過ぎていた。亜津美はドタドタと階段を駆け下りた。
「亜津美ちゃん、これ持って行って」
 階段を下りたところで、マイペースの祖母がいきなり小さな白い袋を差し出してきた。なんだか見覚えのある袋だった。それは初詣に行った神社の袋だった。
 このタイミングで渡すかー。
 そう思いながら中を見てみると、案の定、お守りだった。しかも、いろいろ種類がある中で、まったく同じお守りだった。色まで一緒なのには驚くしかない。
「おばあちゃん、ありがとう」
 亜津美はすこし引きつった顔でお礼を言うと、カバンの中にしまった。
 靴を履いていると、背後に視線を感じた。立ち上がり、振り返ると、なんと家族全員が立っていた。亜津美は呆気に取られた。というより、ちょっと笑ってしまった。
「忘れ物はない?」
「受験票は持ったのか?」
「パスモは?」
「ホッカイロは入れた?」
 あわてんぼうの亜津美は昔から忘れ物が多い。みな、心配しているのだろう。
「全部、持ったよ。じゃ、いってきます!」
 亜津美は荷物を肩にかけ手を振った。外に出て歩き出すと、玄関のドアが開く音がした。
 振り返ると、やっぱりみんなで見送っている。なんだか気恥ずかしくて、思わず早足になった。
D
 本命校の手応えは悪くはなかったが、自信があるわけでもなかった。答え合わせはあえてしなかった。すべり止めの受験はこれからだ。中途半端に結果を知って悪影響を受けたくない。
 そして嵐のような二週間が過ぎ、予定していた受験を全て終えた亜津美は塾へ行った。
「どうだった、W大は?」
 すぐに塾長に声をかけられた。不敵な笑みを浮かべている。
「わからないです」
「答え合わせはしてないのか?」
 亜津美はうなずいた。
「大丈夫だよ。受かってるよ」

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