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『亜津美の受験』曽我部敦史


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 母親は弁当を作っていた。いったい何時に起きたのだろう。
「全然。なんかボーッとするよ」
 椅子に座って改めてテーブルを見てみると、妙に豪華な朝食だった。しっかり食べろということなのだろうが、早起き過ぎて、食欲が全然湧かない。亜津美はヨーグルトとフルーツだけで済ませようとした。
「しっかり食べないと、頭が働かないわよ」
 母親の言葉に、仕方なく亜津美はモソモソと食べ始めた。やっぱりおいしくない。
「糖分が必要だから、オレンジジュースも飲んでいきなさい」
「うん」
 オレンジジュースで、いつものようにパンを流し込む。
すると、寝間着姿の父親が入ってきた。
「新聞、まだ来てなかったよ」
 誰に聞かれたわけでもないのにそう言うと、父親は亜津美の斜向かいの椅子に腰掛けた。いつもならまだ寝ている時間なのにどういうつもりだろう。
「何? 仕事、早出なの?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど」
 父親はバツの悪そうな顔をしながら、テレビのリモコンを操作した。いつもは賑やかな民放なのに、なぜかNHKにしている。
 父親は何をするでもなく、椅子に座ってテレビを眺めていた。大あくびを連発している。気になって余計、食欲が湧かない。
「ソファに座って見ればいいのに」
 亜津美は耐え切れず、そう言った。
「今日はまあ・・・。リラックスして頑張ってよ」
 父親は少し硬い笑顔を見せると、テレビを点けたまま部屋を出て行った。そんな簡単にリラックスできたら誰も苦労しないよ。そう思うと、今度は急にお腹が痛くなってきた。食事を中断し、トイレに向かう。使用中だった。どうやら賢太郎らしい。なんで今日に限ってみんな早起きなのだ。すぐに出てくる気配はない。どうせ、スマホ持参で籠っているのだろう。
「ねえ、早く出てよ。こっちは忙しいんだから」
 亜津美はドアを乱暴にノックした。すぐに水を流す音が聞こえ、弟が出てきた。
「ごめん、ごめん」
 いつもなら一言多い弟だが、妙に従順だった。そんなことはどうでもいい。お腹が痛いのだ。亜津美は入れ替わりで中に入った。

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