「お父さん、起きてー。そんなに寝てると腐っちゃうよ」
「寒いよ、結月。掛け布団を返して……」
「もう日が暮れてるよ? 晩御飯にしようよ」
娘の結月が言う通り外はもう暗くなっていた。休日ということもあって少しだけ昼寝をするつもりだったのだが、想定以上に寝てしまった。慌てて、しかし緩慢に、起き上がってダイニングへ向かう。
週末は、俺ではなく、結月が食事当番だ。食卓にはすでに料理が並べられていた。結月は、中学生にもかかわらず、家事全般を器用にこなす。俺が用意する普段の献立は丼物や大皿一品ばかりだが、結月が当番を務めると皿数が多い。
「さすがは結月。今夜の料理も美味しそうだ」
「そういうお世辞はいらないから早く席に着いて」
その呆れ気味な言い方を聞いて思う。
「結月は、お母さんに似てきたな……」
「ん? なんか言った?」
「いいや、なんでもないよ」
誤魔化すように小さく笑い、俺は、彼女の向かいに座った。