人は言う、完璧な人間なんていない、と。誰にだって欠点はあるのだと。そんな言葉に勇気をもらっている方々には申し訳ないが、「完璧な人間」は存在する。そして、完璧な人間こそが、主役になれるのだ!
ティリリリリ、スマホのアラームで目を覚ました。私は窓から差し込む光に、大きな目を細めながら身体を起こす。さぁ、新しい1日が始まる。主役は…そう!この私!妃(きさき)!!この物語の主人公であり、完璧なヒロイン!
「起きてるの?早くしないと遅刻するわよ。」
急に部屋のドアが開いた。
「あんた何やってんの、鏡の前でポーズなんかとって。アホなことしてないで早く準備して学校行きなさい!」
「ちょっと勝手に開けないでよ!はいはい。すぐに行く!」
洗面所で顔を洗い支度を始める。朝食を済ませた私が玄関で靴を履いていると、母が見送りに来てくれた。
「もう、毎日毎日いいって言ってんのに。」
「そんなこと言わないの。忘れ物ない?ほら、忘れ物!」
「はい、ありがと。じゃ行ってきます。」
玄関のドアを開けようとしたその時私はあることに気付いた。
「あっ!」
母が身体をビクッと震わせ、
「なにどうしたの?」と聞いてくる。
「いけないいけない、忘れるところだった。」
そう言い私は玄関にある姿見の正面に立ち、笑顔を作る。
「今日も私は世界一可愛いっ。よしっ!」
母のため息が聞こえる。
「まったく…。この子がこうなったのは、可愛い可愛い言い続けるパパのせいかしらね。ほら!早く学校行きなさい!」
「行ってきまーす。」
「あら、妃ちゃん、おはよう!」
家を出るとすぐに声をかけられた。
隣のお家の遠藤さんだ。
「おはようございます!」
私は先ほど鏡で練習した笑顔を作りながら明るく挨拶を返した。
「妃ちゃんこの前のテスト、また3年生で1位だったんだってね。お母さん嬉しそうに話してたわよ。本当によく頑張るのね。」
「はい!私には夢があるので、いくらでも頑張れます!」
「そうなのね!うちのアホ息子も見習ってほしいわぁ。行ってらっしゃい。」
「行ってきます!」