小説

『主役』古林一気(『白雪姫』)

そう、私には夢がある。女子アナになりたいのだ。そして、私と釣り合うイケメンスポーツ選手と結婚して、幸せな生活を送るのだ。
「おはよ!妃ちゃん!」
そんなことを考えながら歩いていると、後ろから声をかけられた。
後ろを振り返ると、この暖かい陽気に似合わぬ雪だるまのような体型をした人の姿があった。
「あ、おはよう。まみちゃん。」
この子は、何かと私にくっついてくる金魚の糞みたいな子。可哀想にも、容姿にあまり恵まれず、学校でもあまり目立たない存在である。
「ついに文化祭だね〜。」
そう、今日は待ちに待った文化祭、正直文化祭そのものはどうでもいい。大事なのは文化祭の催しの一つ、ミスコンである。私の通う高校は世間ではかなり有名な学校であり、中でもミスコンは芸能関係者も見に来るほどで、優勝すれば注目される。つまり、優勝すれば私の夢に大きく近づけるのだ。
「ミスコン出るんだよね?頑張ってね。」
「ありがとう!頑張る。」
言われなくても頑張るつもりだ。そして絶対に優勝する。

しかし、それには障害が一つある。同じ学年の白雪という存在だ。彼女は完璧な私と違い、容姿も成績も運動も至って普通。さらにはどこか抜けている性格で、忘れ物や何も無いところで転んだりと、ポンコツなのだ。しかし、彼女はなぜか人気があり、私と彼女は、ミスコン優勝候補と言われている。
なんとしてでも優勝したい私は、ある作戦を計画している。
その作戦とは、ミスコン前に白雪をランチに誘い、私が下剤を入れた食べ物を食べさせ、トイレから出れなくし、ミスコン出場を阻止するというシンプルな作戦だ。

ミスコン2時間前、ちょうど正午、私は自分のクラスの出し物であるたこ焼きを持って白雪を探していた。もちろん、たこ焼きの一つは下剤入りである。とにかく歩き回り探していると、ちょうどテラスに白雪の姿があった。私は急いでそっちへ向かい。白雪に声をかけた。
「こんにちは、白雪さん。お昼ご飯?よかったら一緒に食べない?」
「あ、妃さん。いいよ!、食べよ食べよ。」
無警戒な白雪、これなら作戦も簡単に成功しそうね。私は手に持ったたこ焼きをテーブルに置いた。
「よかったらこれ食べて?うちのクラスのたこ焼き!」
「え、いいの?ありがとう!でもね…。」
白雪が何か言いかけようとしたその時、後ろから大きな声が聞こえた。
「おーい!買ってきたよー!」
振り返ると7人ほどの男女のグループがこちらに向かって来ている。
「あ、あれ私の友達たちなの。みんなで持ち寄ってお昼一緒に食べようって約束してて。」
「席とってくれてありがとねー!いっぱい買ってきたよ!あれ?妃さん?」
「ありがとう美波ちゃん、みんな。妃さんがお昼一緒に食べようって!」
「お、いいじゃん!二人ともミスコン頑張らないとなんだから食べな食べな!」
私は困惑を表情に出さないよう笑顔を取り繕って、
「ありがとう!」
というので精一杯だった。しかし作戦はまだ失敗したわけじゃ無い。とにかく下剤入りたこ焼きを白雪に食べさせればいいのだ。私はさりげなくそっと、たこ焼きを白雪の近くに動かした。

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