小説

『さがしもの』そらこい(『天の羽衣』)

 信二の提案に海斗はドキリとした。このままでは折角二人きりになれる時間が出来たと言うのに、壊されてしまうからだ。
「嬉しいけど、大丈夫。あの公園はそんなに広くないし、海斗くんがいるから」
 だからこそ羽衣のこの言葉に、海斗は心底ホッとした。
 その日の放課後。二人はストラップ探しを続ける。
「今日も見つからなかったね……。海斗くんにも手伝って貰っているのに……」
「そ、そう、だね」
 時間いっぱい使って二人で見つかるはずもないストラップを探し、
「ねぇ羽衣ちゃん。今度はもう少し違うところを探してみようよ。もしかしたら落としたのはここじゃなかったかもしれないし。僕どこでも付き合うから」
「う~ん。そうかな……そうかも。海斗くんありがとう」
「気にしないで! それじゃあまた明日」
「うん、また明日ね」
 本当の事を言えないまま解散して朝を迎える。
 また明日、また明日と言葉を重ねるたびに、僕と羽衣ちゃんの距離は近くなっていき、本当の事は言い辛くなっていく。
 僕の中でストラップの存在がどんどん大きく、重たくなっていった。

 事件が起こったのは、ストラップ探しを始めて五日目の放課後のことだった。
 二人が公園でストラップを探していると、
「――あったぜ、探しているストラップってこれだろ?」
 背後からそんな声を掛けられる。
「「えっ⁉」」

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