小説

『真夏の浦島奇譚』小杉友太(『浦島太郎(御伽草子)』)

「まあ、結果的に老人を保護してたんだからさ。俺たちはきっといいことをしたんだよ」
「うん。で、いつのまにかこんな所にいる」
「まるでここが竜宮城みたいだな」
 私とユリは声を上げて笑った。ユリのことは前からずっと気になってはいたが、急に仲が深まったのは確かに爺さんと婆さんのおかげではある。初めて一緒に夕飯を食べ、尽きぬ話に場所を変えて酒を飲み、調子に乗ってデートに誘ったらOKを貰った。今日はその約束の日で二人は水族館を訪れている。
 私はそっとユリの肩を抱き寄せる。鶴を助け、亀には感謝され……。縁起がいいのは当然なのかもしれない。

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