もう通いなれた通学路を走る。方向は同じはずだ。
泉に追いついたら何を言う?
今まで散々考えてきたはずなのに、すべて吹き飛んでいた。
全部自分が悪い、なんて。
だから泉の傍にいる資格はない、なんて。
どこまで自分勝手。
目を背けていただけだ。
苦しんでいるのが、自分だけだと思っていた。
許すとか、許されるとか、
結局、自分の事しか見えていなかったのだ。
独りよがりで、臆病で、
その結果、親友だった人を傷付けた。
目が熱くなる。
泣くな、私が。
とにかく走る。
道の先に一つ、人影が見えた。
後ろ姿でも、誰だか分かった。
「泉!」走りながら、叫ぶ。声が震えていた。
久々に名前を呼んだな、と思う。
人影が立ち止まり、振り返る。
「葵」
私の姿を認め、目を見開いてぽつりと、私の名を呼ぶ。
その姿がどんどん近づく。
そのまま、私は泉に抱き着いた。
息が切れる。
ほとんど泣きそうだ。
でも、それじゃいけない。
自分から言うんだ。
泉の両肩に手を置き、自分の体を離す。
そうして、真正面から泉の顔を見る。
驚いた表情。
右目の横に、一筋の傷。
私は泉の両目を見据え、
そして、口を開く。