小説

『神推し』花園メアリー(『古事記』)

 その直後、一瞬目もくらむようなまばゆい光に包まれたかと思うと、ステージ上にはそれぞれのグループ代表者である、天照大神と、大国主命が並んで現れた。
 わたしは息を飲んだ。
 これこそまさに奇跡のコラボ。
 まさにレジェンド、つまり伝説。
 この上もなく平和で喜びに満ちた光景。
 ぎっしりと会場を埋め尽くす大勢のファンもみな感無量だ。
 すでに嬉しさのあまり、泣きじゃくり始めている人もいる。
 舞台上の神にアピールしようと、応援グッズのおふだを必死で振り回している人々を見回していたわたしは、突然あるものを目にして、あまりの驚きで金縛りになってしまった。
 熱狂するファンの中に、曲がりなりにも自分も「神」であるはずの夫が喜々として、ひときわ大きなおふだを振っている姿を見つけたのだ。
 ああ、だけど、わたしが脳天をガツンとやられた理由はむしろ――夫が手にしていたそのおふだが、一日だけ数量限定で授与されたというまぼろしの、まさにファン垂涎のレアなお宝だったことだ……。

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