小説

『四季旅館』阿部凌大(『浦島太郎』)

 限りない粒となった私のそれぞれは、これからまた木々の一部となり、空の一部となり、野を駆ける獣やせせらぐ小川となり、時には風となってその最中を走り抜けるのだろう。そしてまた移ろい、私はその中で生きる。
 儚く、輝かしい四季の一部となった私を、きっとあの旅館は、また快く迎え入れてくれるだろう。いつか私を救ってくれたあの旅館から望める景色を、次は私が彩るのである。世界の一部として、四季の一部として、そしていつまでも。

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