漫画を一巻読み終えた頃、カンナは注文した料理を持って来てくれた。おかゆと味噌汁だ。たったそれだけだが、満足感があった。そしてやっぱりカンナは料理が上手だ。シンプルな料理をこんなに美味しく作るなんて、出汁でも使っているのだろうか。いつ出汁なんて取ったのか分からないが、聞いたら怒られるだろうからやめておこう。
「お兄さん」
「頭、撫でてほしいのか?」
「うん」
「なら、こっちに来い。膝枕してやるぞ」
「うん・・・」
いつもより控え目な反応。俺の風邪が気になるのだろうか。
「カンナのおかげで良くなってきてるよ」
「そう?嬉しい」
なんとなく手を触った。腕を撫でようとした。素肌に触れた瞬間、カンナはビクッと震えて、俺から離れた。
「ど、どうした?」
「ごめん。ごめんなさい」
「あ、いや。俺も軽率だった」
「そ、そうじゃなくて!」
「・・・どうした?」
「やっぱりお兄さんには、早く元気になってほしい」
この日、カンナは俺に触れることはなかった。心配をしてくれている。そう解釈した。