小説

『花に嵐のたとえもあるが』川瀬えいみ(『海女と大あわび』(千葉県御宿町))

 とはいえ、『たまたま幸運』がいつまでも続くとは限らないから。
 私、見るだけじゃなく、絵を描くことを始めようかな。二人で海に出掛けていって、彼は釣り。私は、彼の隣りで絵を描くの。
 釣りをしている彼の絵、海や浜の風景や彼が釣った魚の絵。
 私、花の絵だけじゃなく、歌川国芳の鯨の絵なんかも愛嬌があって好きなんだ。
 『鯨を釣ってみせて』と頼んだら、彼はどんな顔をするだろう。

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