小説

『岩が落ちたら』Tsukishita(『鯖くさらかし岩』(長崎県時津町))

 そんなことを考えていたら、事務所の内線が鳴った。
「はい、○○です」
「10時にお約束している五島の・・・」
胸が高鳴った。聞き覚えのある、女性の声。まさか、とドキドキしながらドアを開ける。2度目の再会でも、やはり驚きは隠せない。ヒデコだった。
「林君?・・・お久しぶりです」
「・・・中へどうぞ」
いかにも漁業者という中年男性らとともに、ヒデコが例によって目を丸くしたまま部屋へ入る。どうやら、五島の六次産業化プロジェクトは官民共同事業らしい。
やり取りを見ていた男性が「知り合いかい?」と聞く。僕らは顔を見合わせた瞬間、吹き出してしまった。「ええ、腐れ縁というやつですかね」。僕らはよろしく、と固い握手を交わした。

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