人気のない学校は、いつもとはちがう場所みたいだった。
昼間と同じように、隣のクラスをのぞき込んでみる。誰もいない教室に、自分の影だけがぽつんとうつっていた。
下駄箱を出てから、近道をしようと裏庭をつっきる。その途中で「げっ」と声をあげそうになる。あの男子と他二人がいたのだ。
向こうも気まずそうに目を背けたので、通り過ぎようと前を向いたまま自然と足は早くなる。
「こら! そこなにまだ残ってんだ!」
響く怒鳴り声に驚いて振り返る。
大股でずんずんとこちらに向かってくるのは、学年主任の広瀬先生だった。眉毛の角度がいつにもまして鋭くなっている。
「今日は一斉下校の日だぞ! 分かってんのか!」
三人は顔を見合わせて目配せをしていた。先生がいる手前、表情にこそはでなかったが、それでも新太には分かった。
「ちょうどいいや。こいつも仲間ってことにしよう」
そう言い合っているのだろう。
一通りの説教が終わり広瀬先生が去ってから、リーダー格はにやにやしながら新太に話しかけてきた。
「わりーな。言い訳すると説教ものびるだろうからさ。お前はちがうってつい言いそびれたわ」
頭にカッと血が上るのと同時に、新太は両手を強く握りしめた。そして、スッと息を吸い込んで吐き出してからパッとひらいた。
「そうだよなー。俺、めっちゃ運悪かったな」
にかっとした笑顔をつくってみると、相手がたじろぐのが分かった。三人がもう一度顔を見合わせる。