初めて見る鬼は想像以上にでかく、恐ろしかった。
ここで死ぬのか・・・。
そう覚悟した。
けれど、少し離れた所で大きな泣き声が聞こえた。その泣き声の方を見ると子供が動けずに泣きじゃくっている。
「おい・・・逃げろ・・・。」
微かな声も届かず、子供は泣いたまま。
鬼は子供の方を見てそちらに動き出す。
「おい、そっちに行くな、こっちが先だろ、バカ鬼、おい。」
このままでは子供が殺される。
「くそっ!」
痛む体を無理やり動かそうとするが一歩動けば激痛が走る。
「いってぇぞクソ野郎!!」
思いっきり歯を食いしばり鬼の踵の部分をめがけて斬りかかる。
渾身の一撃は見事に決まり、鬼はドシン!とその場に跪く。
「来いよ!子供狙っていきがってんじゃねえぞ!」
鬼は顔をゆっくりとこちらにむけ、怒りの形相をしている。
「・・・。」
その恐ろしさに息を飲み、またしても体が震える。
「おい、子供!泣くな!絶対守ってやるから逃げろ!早く行け!」
こちらの必死の声に子供は泣くのを必死にこらえ走っていった。
「ガハッ。」
口から勢いよく血が出る。もう余計な言葉も吐ける余裕がない。
「・・・。」
鬼はゆっくり立ち上がりこちらに向き直る。
「・・・。」
俺だって一生懸命鍛錬してきたんだ。桃太郎みたいに天才じゃないけど、負けないくらいやってきた。
「・・・。」
呼吸を整え、ゆっくりと構える。
鬼はもう一度大きく金棒を振り上げる。
「おお!!」
そしてこちらも勢いよく踏み込み鬼の間合いに入り込む。
・・・約束したんだ。
桃太郎がいない間は俺がこの村を守るって。