小説

『テクテクと歩く』真銅ひろし(『三年寝太郎』)

 いつか本気出す。
 いつか本気出す。
 いつか本気出す。

 心の中でずっと思っている。
 でもなかなか上手いこと体が動かない。
「寝る前は決意すんだけどなぁ・・・。」
 朝、布団に横になりながらポツリと呟く。
 今年で35だ。

 いい加減働かなくちゃいけないし、『いつまでもあると思うな親と金』
 どっかで聞いたことのあるような標語が頭をよぎる。

『ニート』

 早い話がこれだ。
 認めたくないが、俺は今これだ。
『三年寝太郎』
 という物語があったが、俺は現在『十年寝太郎』状態。
 なんの役にもたっていないクズ人間、なのかもしれない。
「・・・。」

 インスタントのラーメンをすする。
 時計は13時をさしている。
 親は仕事でいない。
 昼にのそのそと一階のリビングに降りていき、飯を食べ、また自室に籠りネットサーフィンかゲームか睡眠をする。
 そんな毎日だ。
「・・・。」

 外を見るととても天気が良かった。
 雲ひとつない晴天。
「んん~~~~。」
 意味もなくうめきながら、適当に外着に着替え、靴を履き、久しぶりに外に出た。
 本来は飯を食べて部屋にこもるのだが、なんだか今日は外に出てしまった。
 特に何かをやるわけでもなく、ただただ歩いてみる。本当は外に出る事すら億劫のはずなのに。
「は~い、みんな並んで~。」
 大きい公園の横を通ると幼稚園の先生が園児に号令をかけている。今日だけ公園に来たのか、それとも決まった時間に来るようになっているのかは分からないが、園児たちははしゃぎながら一列に並んだ。
「え!嘘でしょ!本当!?」

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