小説

『キノッピオ』もりまりこ(『ピノキオ』)

 なんか男のひとらしき声が、はもってる。
 木の扉をぼくはどんとあけた。そこにいたのはとても大きな背のちょっと顔が、ヨーロッパ彫刻みたいにいけてる男の人ふたりだった。ふたりの洋服には昭和の売れない漫才師みたいなリボンがついていた。
 ふたりはでれっとわらってる。
「じぇぺっとさんがこしらえてくれたの。わたしたちがキノのおたんじょうびプレゼントよ。それがね、ごめんなさい」
 いみがわからない。
「だから、じぇぺっとおじいさんは?」
「あたしたちとひきかえに」ってのっぽさんみたいな緑色の帽子をかぶった男のひとがいうと、
「そらにめされたの」ってもうひとりのおなじくのっぽさんちょっと眉毛が濃い系の目元口元きりっとした彼が、声をだす。台詞の割り振りみたいだった。
 そらっていうとき、ながくて白いゆびがほんとうに天窓のあたりをさしていた。徹夜してつくっていたのは、このふたりだったのだ。

 じぇぺっとさんがぼくにあてた手紙をのこしていた。
<キノ、たのしかったよ。おたんじょうびおめでとう。おまえにとびっきりのかぞくをのこしたかったんだ。ほしがってただろう、かぞく。おとうさんがいておかあさんがいてってやつだよ。そしたら、またまたおじいさんしっぱいしちまった。そろそろねんぐのおさめどきじゃな。きのっぴお、とうさんたちといやかあさんでもいいあのふたりとなかよくな。それとふぃがろの>
 途中で終わってた。ふぃがろをあいしてほしいんだなってわかった。
 ただひとつわかってないのは、ぼくが家族をほしがってるとおもってたこと。
 そんなことなかったのに。
「ところで、あなたたちもピノッキオなのちなみにぼくはキノッピオだけど」
「え? わたしたちはピオッキノ?」
「いまそういったでしょ」
 ぼくはちがうよっていわなかった。そして3人でわらった。
 わらうのってきらいじゃないなっっておもってたらふぃがろが、足元にじゃれついてきた。ふとね、ぼくたちみんなのハグには体温が足りないって思ったの。ものたりなかった。でぼくのむねのあたりの空洞の場所がほんとうにぽっかりしてて、とにかく寒かった。なにかがたりないってさびしいんだなって。

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