小説

『キノッピオ』もりまりこ(『ピノキオ』)

 最近眠る間をおしんで仕事している。いつ寝ているんだろうっていうぐらいに。

 あれからもぼくにちょっかいを出す人はいろいろいたけど。ぜんぶスルーする。ぼくたちにんげん。おまえはつくえとかいすとおなじなかま。って変な歌詞を、チューリップの曲にあわせて歌うやつもいた。
 でもへいき。ぼくはじぇぺっとさんがこころをつくりわすれたから、へいきなの。ぼくはつくえといすの仲間か。ふいに思い出した。大和郡山先生のしむふぃどそん属のでぃすかすは、元気かな?

 とぼとぼ土手を歩いていた帰り道。一匹の猫が歩いてた。ちょっと変な歩き方だった。ぎくしゃくしてたから骨でもいためたのかなって思って近づいていったら、逃げずにこっちに来てくれた。真っ黒い猫。首にはネームプレートがかかっていた。
<ふぃがろ>って書いてあった。おそるおそるぼくはそのこを抱き上げた。
 あれ? 猫の匂いがしないって思った。それよか、まるでじぶんがお風呂に入った時に香ってくる、どくとくの木のにおいがした。
 イスノキ。マンサク科の常緑高木でできているぼくのからだにそっくりだった。じぇぺっとさん、もしかしてこのふぃがろくんも作っちゃたのかな。
 ぎゅっとして地面に返すと、ずっとついてくるからいっしょに帰ってみた。
 最近、じぇぺっとはすぐ作業部屋に入ってゆく。お帰りって迎えてくれて、夕飯をコンビニ弁当ですませた後、すぐとりつかれたように仕事をしにゆく。
 ふぃがろを連れて帰った日、じぇぺっとさんはすごくなつかしそうに黒猫をみてだきしめた。ふぃがろもうれしそうにじぇぺっとさんの顔を舐めていた。
「どこに行ってたんじゃ。探しておったのに。迷い猫屋に5万も払ったのに、みつからんかったのに」っていうじぇぺっとさんの声を聞いていたら。ぼく、なんだかぜんぶこわしたくなった。どういうこと? これってもしかしたら、しっとっていうやつ? いやだよね、そんな生臭いの。やだやだってしゅんってしてたらじぇぺっとさんがぼくを手招きした。ふぃがろとぼくとおじいさんでハグをした。だんごになってハグをした。サッカーで誰かがゴールを決めたときみたいに。じぇぺっとさんだけに体温を感じた。

 今日は誕生日だったからちょっとだけ、速足で帰った。校門を出て、土手をえんえんと歩いてそのどんつきまで来て右折したり左折したりして家に着く。じぇぺっとさんきっとぼくの誕生日プレゼントを用意してくれているかも。ただいまって声を掛けたのに、出てきてくれなかった。サプライズだよきっと。で、すこし待ってみた。なにも変化はなかったそのすぐせつなその代わりにその部屋から返って来た声があった。
「おかえりなさい。きのっぴお」

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