小説

『リサーチ』佐々木順子(『いなばのしろうさぎ』)

 今回は金塊詐欺の証拠の帳簿関係を持ち出すことと、ついでに刑事部長の娘婿候補の査定も請け負った。一仕事終えたから、今日から次の仕事の仕込みだ。今度は、土木工事の入札における談合疑惑調査。怪我が完治してないからほとんどコンピューターで済む仕事に回されたけど、怪我の原因をつくったやつ(俺の上司)のお情けだからありがたがってなんかやらない。
「おい、シロー。頭は殴られてボケたか。ボーっとしてないで早く取り掛かれよ」
 蛇みたいな顔で叫んだのが本当の上司の龍さん。あそこで顧客とトラブルになるようにうまくタイミングを合わせた策士だ。刑事部長の力があれば俺の担当の警官をあの二人にするのも簡単だったろうし。
「聞こえてるかあ?」
「はい、はーい」
 返事をしながらキーを打つ。やっぱり俺みたいな頭脳派はこっちのほうが合ってるよ。
 俺の名前は因幡(いなば)白(しろ)兎(う)。主に公的機関の雑用をしている会社の調査員だ。

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