小説

『夢みてえな一錠があんだけどよ』田中慧(『スピードのでる薬、怪盗紳士ルパン』)

 どこ行きやがった。出てきやがれ、この下衆野郎が。
 おい、どうした、まさか、そうか。
 長時間継続するってわけじゃねえんだ。
 飲めば飲むほど、よりスピードが出るってことなんだな。だから、例えば十分が一秒だとしたら、二錠だとその二乗だから、ああ、ダメだ、計算ができねえ。くそったれめ。
 おい、生き急ぎすぎたんだ、馬鹿野郎。今頃お前は白骨か? ざまあねえぜ、まったく。


 なんていう話があるわけ。信じるかい?
 信じるならネエちゃん、一錠どうだい。
 なに、聞いていただろう。
 馬鹿な真似をしなけりゃ世界はアンタのもんだ。
 一錠、一千万ドル。後払いでもいいぜ。
 スピードが出てるうちに、かき集めて持ってこい。

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