内まで照り照りに焼き上がった口を大きく開けて、添えられたプチトマトを吹き飛ばす叫び声だ。
吃驚仰天で小さな悲鳴を上げて、私は思わず後ろに退く。逆にモモちゃんは驚き呆れた感じで身動き一つしなかった。
「此畜生だ、まったく! 俺を丸焼きに為やがって! でもなんなんだ! まだ俺、生きてるじゃねぇか!? 焼くならもっとしっかり死ぬほど焼けっちゅうんだ!」
こんがり豚の頭はパセリの緑野の上で跳ねながら叫んでいた。その度に彩りのプチトマト達も踊った様にポンポンと跳ねている。
及び腰で近づきながら私は恐る恐る豚に訊き返した。
「ど、どうしたの? なんで丸焼きになってしまったの?」
「あぁ? なんでかってそりゃ罰に決まってるだろうが! 罰を受けるのは納得したって、それが丸焼きってどういうこうちゃ! 俺が豚だからか?! 豚だから丸焼きか?! 豚の末路はみんな丸焼きってか?!」
怒りが収まらず痛罵を繰り返す焼き豚。輝く程の新鮮なパセリの上に脂ぎった汁を飛ばしながら叫ぶのを止めない。
「罰って……何か悪い事をしたの?」
「あぁ? 悪い事? そんな事をするかっ! 俺は唯々食っていただけだ!」
「食っていた? ご飯を?」
「あぁ? ご飯だぁ? そうさ俺は生きる為に食っていただけだ! いいか豚っていうのはなぁ、何だって食って生きようとするんだ! 籾殻だろうが、野菜だろうが、コンビニ弁当の廃棄食材だろうがな! ぶくぶく太る為に食うんじゃねェ、生きる為に食って太るんだ!」
「で、でもそれが悪い事なの?」
「あぁ? 俺はなァ、唯々与えられた物を食っただけだ! どんなもんだって食ってやるんだ、生きる為になァ! だから食ってやったんだ! 要らなくなって殺された人間だからって食ってやったんだ! 身も骨も髪の毛だって残さず噛み砕いて食ってやったんだ! ああ、それがどうだぁ? 人間を食う事はわりぃ事だってなって俺はこの有様だ! なんで人間を食ったかって? そんなもん訊かれたって答えようがねぇ! 生きる為に食ったとしか言いようがねぇんだ!」
「人を食べたって……」