小説

『不可解の国からの不思議な声』洗い熊Q(『不思議の国のアリス』)

 地面も草がなく綺麗な石畳になると、更に森の陰りが深く濃くなる。

 モモちゃんが側にいても木洩れ日の光が細くなると怖くなってきた。この深い森が続くのかと不安に感じ始めた頃。
 石畳の道の果て、森の終わりを告げる光源先から甲高い声が聞こえてきた。

「――時間がないよ! 急がないと! 間に合わないよー!」

 あのウサギだ。
 もしかしたら、あのウサギに訊けば何か分かるかも?
 私はそう思うと自然と進む歩が早くなる。モモちゃんも釣られて小走りに。騎兵の行進の様に前足を上げて私を先導してくれる。
 近づく道先の光が眩くなり、そして深緑の迫持を通り抜けると眩んだ白昼が開けた。

 青空の下、美しい結晶質の石柱が並ぶ。敷きつめた床石も白く輝く大広間の様な場所。
 円卓の台が幾つも並び、その卓上にも幾つもの大皿。
 青々とした葉物が皿一杯に敷かれて出来たての料理が上に乗せられる。
 唐揚げ、七面鳥の丸焼き、手羽先、豚カツ……こんがり色の脂まみれ照りが光る料理ばかりだ。

 何なのこの料理は? 不思議に思う序でに、モモちゃんが先頭切って走り出したのは匂いせいかと分かった。

 立ち込める香ばしい匂いを小さな鼻で楽しげに吸い込んで、クンクンしながらモモちゃんは一つの円卓に近づく。
 円卓といっても脚は短く低く。二本足立ちすればモモちゃんでも前足が円卓縁に掛かる。卓上に下顎乗せて一つの料理に興味津々。

「だめよ、モモちゃん。勝手に食べたりしたらいけないの」

 円卓から引き離そうとしてモモちゃんの身体を支えた時、この子が見ていた料理が私の目前。
 大皿一杯に瑞々しい複葉の緑の絨毯。敷き詰められたパセリだ。アクセントに張った赤い皮を見せつけるプチトマトも沢山。
 その赤と緑野の中心に堂々と置かれている、こんがり狐色に焼きあがった豚の頭だった。

 どんとあると思わず萎縮するが、焼けた色合いは正直、美味しそうに見えた。頭の大きさは私よりも圧倒的に大きい。
 それと対峙した時。
 閉じていた豚の目が突然カッと見開き叫び上げたんだ。

「ちっきしょーーーお!!」

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