何と言うことだ!大失敗だ。
分かっていながら私は図らずも、私が一番嫌いなとんでもなく安易でお人好しな屑、腐敗した欲望のままに女を抱きたい気持ちを隠匿し、母に変身してしまった女のご機嫌を取って、「いつだろう。いつ女に戻るだろう」と欲望成就を待つ、死んだ男になっていた!
いたたまれなくなった私は、手にした商品を棚に戻し、何も買わずにコンビニを後にし、外に出た。
肌寒い風が吹いていた。
見上げる空には秋の月が、丸く美しく、それでいてよそよそしくかつ優しく、そして遙か高くに輝いていた。
月光はさやかだった。有無をいわせぬ光が降り注いでいた。
ゆうこ…。
ゆうこはしくじると真っ赤になって詫びた。ゆうこ、いや秋月さんは明るい声で笑った。秋月さんはまん丸な目をして赤ん坊をあやした。
私の地団駄を遙か彼方で月が見ている。
きっと…、
私の何かがちょっと、そうでなければ全部違うのだ。
今夜は十三夜、後の名月という晩だったかも知れない。