小説

『青い女たち』紗々井十代(『ジャックと豆の木』)

 「ひょっとすると、月の裏側にコンビニがあるかも」
 「お金持ってきてないよ」
 「もしくは宇宙の果てまで目指してみるとか」
 「それ、絶対に途中で死ぬよ。餓死」
 四人はかしましく、宇宙でも変わらず好き勝手物を言う。

 ところで、ジャックの失恋通知は月で途切れてはいなかった。
 もっと長く続いていて、きっとあれは宇宙の果てに突き刺さっているのだと思う。
 けれど私たちはそれを確かめはしない。もう十分満足したし、何よりお腹がすいている。
 私たちはこれから、新しく恋をしなければならないし、たくさん遊ばなければならない。
 青い時間は短く、大忙しなのだ。

 宇宙の奥で、「天窓から差す光を浴びて静かに書を嗜むような女性」が瞬いた。

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