小説

『亀の甲羅が割れた顛末』三号ケイタ(『くらげの骨なし』)

 乙姫の居室に参上した亀はそう言った。乙姫は、静かに笑った。
「亀よ、あなたが私のために尽くしてくれたからです」
「しかし、あなたを救うことはできませんでした」
「いいのです。そうしようとしてくれたことで、私は充分です」
 亀は悄然として乙姫の部屋を出た。竜宮の門をくぐると外の海へと出て、そしてもう戻らなかった。

  亀の背の甲が割れており、また海の上を漂い続けているのはこれ以来である。

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